第38回情報科学若手の会

  1. はじめに

    2005 年 9 月 10 日から 9 月 12 日にかけて第 38 回情報科学若手の会を開催いたしました.会場は冬のプログラミングシンポジウム開催のご縁からウェルシティ湯河原(静岡県熱海市)で行いました.全国より 29 名(招待講演者を除く)が参加し,いろいろなジャンルの発表を行い活発な議論を行いました.

  2. 発表および議論

    以下のような発表枠を用意し,議論を行いました.各発表は質疑応答を含め 1 時間強で行いました.

    1. 9 月 10 日

      数学とプログラミング — 中学生向け教材の開発 長慎也(早稲田大学)

      中学生向けの数学の副教材を作ることになった長さんの経験をもとに,プログラミングを利用した数学の楽 しい学習方法とはどのようなものがあるか,ということについて議論しました.多くの参加者がゲームをもと にプログラミングを学んできた経験があったため,数学の教材とゲーム開発をどのように絡ませて効率よく学 習が出来るか,などの議論が盛り上がりました.

      大学の e-learning 教育システムについて 上坂明未(フェリス女学院大学)

      現在,ネットワークの普及に伴い大学教育,大学ネットワークも大きく変化しており,その中でインターネットを利用した教育:e-learnig が注目を集めています.e-learnig は文系・理系問わず学生の情報メディアを 活用する力を養い,よりコミュニケーションの活発な教育のために大学で取り入れられてようとしています. しかし,その運用・活用方法についてはまだまだ検討する必要があります.そこで,大学における e-learning システムを (1) e-learning を活用していく教育方法 (2) e-learning システムの運用の 2 点で議論しました.

    2. 9 月 11 日

      ユビキタス社会における地理情報システムの在り方について 池崎正和(名古屋大学)

      ユビキタス社会では時空間に密接に関係した情報が社会にあふれ,いかにそれらを管理するかが今後の課題です.一方,近年の地理情報システムの研究では,空間情報だけでなく,時間情報を取り扱うようになり,さらに,意味的な情報の取り扱い(semantic integration)についても議論されています.そこで,地理情報システムの現状について概観し,今後の地理情報システムの在り方,及び必要な技術について議論しました.とくに,個人で利用する時空間情報,地理情報システムはどのようなものかという話題で盛り上がりました.

      アドホック・ネットワークを用いた位置依存情報サービスの実現手法 石井洋司(名古屋大学)

      近年,ユーザの位置に応じて適切な情報を提供する位置依存情報サービスが注目されています.従来の位置 依存情報サービスでは,位置依存情報をデータベースで集中管理し,インフラ・ネットワークを介してアクセスしていましたが,従来手法ではデータベースに負荷が集中し要求を処理するのに時間がかかるため,即時性の高い情報を扱うのは困難です.そこで,アドホック・ネットワークを用いて位置依存情報サービスを実現する手法について議論を行いました.とくに,現在応用例としてよく知られる車間ネットワークと絡めて議論しました.

      招待講演

      本年度の招待講演は三菱電機の松井 充さんにお願いしました.松井さんは線形解読法で当時アメリカ標準暗号であった DES の解読に成功し,また DES 解読のご経験から暗号アルゴリズム MISTY の開発をされた経緯などのお話をいただきました.特に,企業においての,研究を行いその製品化を行うことの難しさや,逆 におもしろさなどをお話いただき,非常に興味深い内容でした.また,研究に関するお話だけではなく,研究者として研究以外にどのような興味を持つべきかなどの質問についても丁寧にお答え頂きました.

      気軽にはじめる Web アプリケーションプログラミング 松田耕史(豊橋技術科学大学)

      Webプログラミングは比較的簡単に始めることができますが,Web のアーキテクチャーに係わる制約のため,ある程度の規模のものを作ろうとすると学ばなければならないことが多く出てきます.しかし、最近は よく出来た Webアプリケーションフレームワークが登場し,まったくの初心者でも 10 分ほどでBlogツールのような実用的なアプリケーションを組むことのできる環境が生まれてきました.それらの環境の紹介を,Ruby on Rails というフレームワークを用いて実際にブログアプリケーションを作るでもとともに行いま した.

      光コンピューティングの今 川田宗太郎(電気通信大学)

      80 年代に精力的に行われていた光コンピューティングに関する研究は光の回折限界が叫ばれるようになっ てきてから暫くは停滞していたそうですが,光通信の普及で再び情報処理に光を使うことが研究されるようになりました.特に配線部分に光を使う研究(光インターコネクション)が盛んに行われています.そこで,光 情報処理の背景,川田さんの研究,そして最近の国際会議で発表された新しい概念の光情報処理に関連する研究などを発表していただきました.多くの参加者が光コンピューティングについて知らなかったため,大変興味深い発表になりました.

  3. その他

    その他,夜のセッション(宴会)以外にも花火セッションを行い各人親睦を深めました.また,以下に述べるデモセッション,飛び込みセッションを行いました.

    デモセッション

    今年は日ごろ研究や趣味などで開発しているソフトウェアのデモを披露するセッションを設けました.直前の募集だったのですが,すぐに 4 件集まりました. 笹田による Ruby 処理系 YARV のデモ,筑波大学の水島さんによるプログラミング言語 Onion のデモ,早稲田大学の長さんによる携帯電話で動作する BASIC 環境のデモ,東京大学の鈴木雅貴さんによるインセン ティブコンピューティングのデモの 4 件を行いました.

    飛び込みセッション

    例年どおり,飛び込みで発表したい人を募り飛び込みセッションを行いました. 今年はトヨタ IT 開発センターの疋田さんによる「DRM ってどうよ?」というタイトルで,昨今の DRM (デジタル著作権管理)と今後のあり方についての議論,そして電気通信大学の荒川さんによる「Scheme Visual Debugger」のデモを行いました.

  4. おわりに

    昨年度よりも多くの発表枠を用意することで,参加者全員がいろいろなトピックに触れることができ,また 異分野の研究者ならではの議論が出来て,有意義な会合になったと思います.

    来年度も同時期に情報科学若手の会を開催する予定です.多くの方のご参加をお待ちしております.開催 日,開催場所は現在検討中ですが,以下のウェブページで随時情報を更新していきます.

    情報科学若手の会 http://wakate.aitea.net/

  5. 謝辞

    招待講演を行ってくださいました三菱電機の松井充さん,多額のご援助を頂きました財団法人慶應工学会 様,この若手の会開催にあたり色々と面倒を見てくださいました電気通信大学の多田先生をはじめとするプログラミングシンポジウム幹事の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます.

  6. 参加者一覧(順不同、敬称略)

    • 松井充 三菱電機株式会社 招待講演者
    • 荒川淳平 電気通信大学
    • 池内康樹 豊橋技術科学大学情報工学専攻並列処理研究室
    • 池崎正和 名古屋大学大学院情報科学研究科社会システム情報学専攻 発表者
    • 石井洋司 名古屋大学大学院情報科学研究科社会システム情報学専攻 発表者
    • 伊藤一成 青山学院大学理工学部情報テクノロジー学科
    • 卜部昌平 電気通信大学大学院情報通信工学専攻
    • 大日向大地 電気通信大学大学院情報システム学研究科 幹事
    • 川田宗太郎 電気通信大学曽和研究室 発表者
    • 久野和樹 豊橋技術科学大学大学院
    • 上坂明未 フェリス女学院大学情報センター 発表者
    • 後藤祐一 埼玉大学工学部情報システム工学科
    • 笹田耕一 東京農工大学大学院工学教育部 幹事
    • 繁富利恵 東京大学情報理工学系研究科電子情報学専攻 幹事
    • 鈴木宏哉 慶應義塾大学大学院理工学研究科 幹事
    • 鈴木雅貴 東京大学生産技術研究所
    • 清木昌
    • 副田俊介 東京大学大学院総合文化研究科 幹事
    • 長慎也 早稲田大学理工学系英語教育センター 発表者
    • 徳永拓之 東京大学情報理工学研究科
    • 西尾泰和 奈良先端科学技術大学院大学
    • 野島良 東京大学生産技術研究所
    • 疋田敏朗 トヨタ IT 開発センター
    • 本田裕昭 豊橋技術科学大学知識情報工学課程
    • 松浦知史 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 幹事
    • 松田耕史 豊橋技術科学大学 発表者
    • 松野徳大 株式会社モバイルファクトリー
    • 三神京子 津田塾大学大学院
    • 水島宏太 筑波大学情報学類
    • 三輪誠 東京大学大学院新領域創成学研究科